四分位範囲と箱ひげ図 ~箱ひげ図の読み取り方と書き方~

箱ひげ図は,円グラフ・棒グラフ・折れ線グラフなど数あるグラフの中の1種類で,
データのばらつき具合をわかりやすく示すことができ,
複数のグループの傾向(例:各クラスの学期末テストの得点の分布)を比較するのに適しています。

ここでは,箱ひげ図で表されたデータの読み取り方と箱ひげ図の書き方について学んでいきます。

箱ひげ図の特徴

箱ひげ図は名前のとおり,箱とひげでできたグラフです。

箱ひげ図は,集めたデータから求めた
最小値・第一四分位数・中央値(第二四分位数)・第三四分位数・最大値
の値をもとに作成されています。

箱ひげ図を理解するための準備として,四分位数と四分位範囲について知っておく必要があるので,
まず,四分位数と四分位範囲の解説をしていきます。

四分位数と四分位範囲

四分位数とは

四分位数とは,集めたデータを小さい順に並び替え,データの数が4等分されるように区切った時の区切り値のことをいいます。
データを4等分すると区切り値は3つあらわれ,小さいほうから順に 第一四分位数中央値(第二四分位数)第三四分位数 といいます。

 


【参考】 中央値と平均値は同じではない
 中央値は,小さい順に値を並べたときに中央の位置にある値,
 平均値は,すべての値の合計をデータの個数で割った値
 を表しており,同じではありません。
 平均値は「はずれ値(極端に離れた値)」の影響を受けやすいという弱点があるので,
 注意が必要です。

 (例)
  年収100万円の人が9人いるとするとき,平均値と中央値はどちらも100万円です。
  ここに,10人目として年収1億円の人が1人加わると・・・
  中央値は100万円で変わりませんが,平均値は1090万円になります。
  この平均値を参考にして,10人は約1000万円を稼ぐことができている人たちであると
  考えるのは適切ではありません。


 

四分位数の求め方

四分位数を求める手順は

STEP1:データを小さい順に並び替える
STEP2:データの個数が等しくなるように2つのグループに分ける
STEP3:中央値を求める
STEP4:”グループ小”をデータの個数が等しくなるよう2つのグループに分ける
STEP5:第一四分位数を求める
STEP6:”グループ大”をデータの個数が等しくなるよう2つのグループに分ける
STEP7:第三四分位数を求める

です。

データの個数が偶数個の場合と奇数個の場合でグループ分けのしかたは異なりますが,
共通するキーワードはデータの個数が等しくなるように2つのグループに分けるです。

STEP4,5とSTEP6,7でやることはは,STEP2,3と同じなので,
まずはSTEP1~3を確実にマスターしてください。

 

STEP1:データを小さい順に並び替える

 

STEP2:データの個数が等しくなるように2つのグループに分ける

● データの総数が偶数個(例:12個)の場合

 

● データの総数が奇数個(例:13個)の場合
  データの個数が等しくなるように2つのグループに分けると,6個ずつに分けることができ,
  小さい方から7番目の値はどちらのグループにも入らず余りますが,そのままにしておきます。

ここからの解説では,2つのグループを仮に「グループ小」と「グループ大」と呼ぶことにします。

 

STEP3:中央値を求める

● データの総数が偶数個(例:12個)の場合
  グループ小”の中で最も大きい値と”グループ大”の中で最も小さい値の平均値が中央値になります。
  この例の場合,
  グループ小”の中で最も大きい値は \( 60 \),”グループ大”の中で最も小さい値は \( 64 \) なので,
  \( 60 \) と \( 64 \) の平均値 \( \dfrac{60+64}{2}=62 \) が中央値になります。

 

● データの総数が奇数個(例:13個)の場合
  STEP2で余った小さい方から7番目の値 \( 64 \) が,そのまま中央値になります。

 

次に,第一四分位数と第三四分位数を求めていきますが,
 第一四分位数は ”グループ小における中央値”
 第三四分位数は ”グループ大における中央値”
と考えることができるので,STEP2,3と同じことを繰り返していきます。

STEP4:”グループ小”をデータの個数が等しくなるよう2つのグループに分ける

”グループ小”のデータをSTEP2と同じように2つのグループに分けていきます。

● ”グループ小”のデータの個数が偶数個(例:6個)の場合
    

 

● ”グループ小”のデータの個数が奇数個(例:7個)の場合
  データの個数が等しくなるように2つのグループに分けると,3個ずつに分けることができ,
  小さい方から4番目の値はどちらのグループにも入らず余りますが,そのままにしておきます。
    

 

STEP5:第一四分位数を求める

● ”グループ小”のデータの個数が偶数個(例:6個)の場合
  小さい方のグループの中で最も大きい値と大きい方のグループの中で最も小さい値の平均値が
  第一四分位数になります。
  この例の場合,
   小さい方のグループの中で最も大きい値は \( 52 \),
   大きい方のグループの中で最も大きい値は \( 54 \)
  なので,\( 52 \) と \( 54 \) の平均値 \( \dfrac{52+54}{2}=53 \) が第一四分位数になります。

    

 

● ”グループ小”のデータの個数が奇数個(例:7個)の場合
  STEP4で余った小さい方から4番目の値 \( 52 \) が,そのまま第一四分位数になります。

    

 

STEP6:”グループ大”をデータの個数が等しくなるよう2つのグループに分ける

”グループ大”のデータをSTEP2と同じように2つのグループに分けていきます。

● ”グループ大”のデータの個数が偶数個(例:6個)の場合
    

 

● ”グループ大”のデータの個数が奇数個(例:7個)の場合
  データの個数が等しくなるように2つのグループに分けると,3個ずつに分けることができ,
  小さい方から4番目の値はどちらのグループにも入らず余りますが,そのままにしておきます。
    

 

STEP7:第三四分位数を求める

● ”グループ大”のデータの個数が偶数個(例:6個)の場合
  小さい方のグループの中で最も大きい値と大きい方のグループの中で最も小さい値の平均値が
  中央値になります。
  この例の場合,
   小さい方のグループの中で最も大きい値は \( 68 \),
   大きい方のグループの中で最も大きい値は \( 69 \)
  なので,\( 68 \) と \( 69 \) の平均値 \( \dfrac{68+69}{2}=68.5 \) が第三四分位数になります。

    

 

● ”グループ大”のデータの個数が奇数個(例:7個)の場合
  STEP6で余った小さい方から4番目の値 \( 69 \) が,そのまま第三四分位数になります。

    

以上,解説が長くなったので,例題を使って整理してみましょう。

例題:第一四分位数,中央値,第三四分位数を求める

次の表は,ある10人のグループの数学のテストの得点を表したものである。
このとき,第一四分位数,中央値,第三四分位数を求めなさい。

   \( \fbox{  63,75,52,87,58,48,68,95,70,80  } \)

【解答】
第一四分位数 ・・・ \( 58 \)
中央値 ・・・ \( 69 \)
第三四分位数 ・・・ \( 80 \)
【解説】
10人分のデータを得点の低い順に並べ替えると,次のようになります。

これらのデータをデータの個数が等しくなるように2つのグループに分けると,
データの総数は \( 10 \) 個なので,ちょうど \( 5 \) 個ずつに分けられます。

”グループ小”の中で最も大きい値は \( 68 \),”グループ大”の中で最も小さい値は \( 70 \) なので,
\( 68 \) と \( 70 \) の平均値 \( \dfrac{68+70}{2}=69 \) が中央値になります。

つぎに,”グループ小”のデータをさらに2つのグループに分けると,
”グループ小”のデータの個数は \( 5 \) 個なので,\( 2 \) 個ずつに分けることができ,
小さい方から3番目の値が余ります。
よって,この余った値 \( 58 \) が第一四分位数になります。

同様に,”グループ大”もデータの個数は \( 5 \) 個なので,\( 2 \) 個ずつに分けることができ,
小さい方から3番目の値が余ります。
よって,この余った値 \( 80 \) が第三四分位数になります。


四分位範囲とは

四分位範囲は

四分位範囲 = 第三四分位数 - 第一四分位数

で求めることができます。

最小値から第一四分位数,第一四分位数から中央値,中央値から第三四分位数,第三四分位数から最大値の
各区間には,それぞれ約25%のデータが含まれることから,四分位範囲は中央値付近の約50%の値の散らばり具合を表しています。

例えば,12人が行ったテストの得点の場合を考えると,

● 第一四分位数: \( 53 \) 点,中央値: \( 60 \) 点,第三四分位数: \( 68 \) 点の場合,
    四分位範囲 \( =68-53=15 \)(点)
  となり,\( 15 \) 点の範囲の中に6人分のデータが含まれていることになります。

● 第一四分位数: \( 45 \) 点,中央値: \( 60 \) 点,第三四分位数: \( 75 \) 点の場合,
    四分位範囲 \( =75-45=30 \)(点)
  となり,\( 30 \) 点の範囲の中に6人分のデータが含まれていることになります。

つまり,四分位範囲の値が大きいほど,データの散らばり具合も大きいことになります。

 

箱ひげ図の書き方

箱ひげ図は,最小値・第一四分位数・中央値・第三四分位数・最大値を図に表したものであり,

ひげの左端  ・・・ 最小値
箱の左端   ・・・ 第一四分位数
箱内部の縦線 ・・・ 中央値
箱の右端   ・・・ 第三四分位数
ひげの右端  ・・・ 最大値

を表しています。

箱ひげ図は,縦向きになっている場合もあります。

ひげの下端  ・・・ 最小値
箱の下端   ・・・ 第一四分位数
箱内部の横線 ・・・ 中央値
箱の上端   ・・・ 第三四分位数
ひげの上端  ・・・ 最大値

 

 

STEP1:最小値・第一四分位数・中央値・第三四分位数・最大値を求める

集めたデータを小さい順に並べ替え,最小値・第一四分位数・中央値・第三四分位数・最大値を求めます。
第一四分位数・中央値・第三四分位数 の求め方の詳細はコチラ

STEP2:求めた値をもとにグラフに書き込む

STEP1で求めた最小値・第一四分位数・中央値・第三四分位数・最大値をもとに,


になるよう,グラフに箱とひげを書き込めば完成です。

 

箱ひげ図の読み取り方

箱ひげ図から読み取ることができる値

箱ひげ図は,最小値・第一四分位数・中央値・第三四分位数・最大値を図に表したものです。

また,箱の左端が第一四分位数,箱の右端が第三四分位数を表していることから,
箱の長さが四分位範囲を表しています。

さらに,ひげの左端が最小値,ひげの右端が最大値を表していることから,
ひげの長さが範囲を表しています。

 

ヒストグラムと箱ひげ図の対応

ヒストグラムに対応した箱ひげ図を見つけるための手順は次のとおりです。

STEP1:ヒストグラムに各階級の度数を書き込む
STEP2:ヒストグラムに各階級の累積度数を書き込む
STEP3:四分位数が小さい方(大きい方)から何番目の値になるか求める
STEP4:ヒストグラムから四分位数がどの階級に含まれているか求める
STEP5:代表値がヒストグラムと同じ階級に含まれている箱ひげ図を選ぶ

例として,31人分のデータを集めた次のヒストグラムに対応する箱ひげ図はどのようになるか考えてみます。

STEP1:ヒストグラムに各階級の度数を書き込む

ヒストグラムの各階級の棒の上側に度数を書き込みます。

 

STEP2:ヒストグラムに各階級の累積度数を書き込む

ヒストグラムの各階級の棒の内部に累積度数を書き込みます。

 

STEP3:四分位数が小さい方(大きい方)から何番目の値になるか求める

データを小さい順に並べたとき,第一四分位数・中央値・第三四分位数がそれぞれ小さい方(大きい方)から
何番目の値になるか求めます。
具体的な値はわかりませんが,問題ありません。

1.31個のデータを2つのグループに分けると,15個ずつに分かれて1個余るので,
  中央値は小さい方から16番目の値であることがわかります。

2.”グループ小”の15個のデータを2つのグループに分けると,7個ずつに分かれて1個余るので,
  第一四分位数は小さい方から8番目の値であることがわかります。
  同様に,
  ”グループ大”の15個のデータを2つのグループに分けると,7個ずつに分かれて1個余るので,
  第三四分位数は大きい方から8番目(小さい方から24番目 )の値であることがわかります。

 

STEP4:ヒストグラムから代表値がどの階級に含まれているか求める

ヒストグラムから,最小値・第一四分位数・中央値・第三四分位数・最大値がそれぞれどの階級に含まれているのかを求めます。

【最小値】
 度数が \( 0 \) ではない階級のうち最も小さい階級は \( 0 \) 回以上 \( 2 \) 回未満なので,
 最小値は,\( 0 \) 回以上 \( 2 \) 回未満の階級に含まれます。

【第一四分位数(小さい方から8番目)】
 ヒストグラムから,
 \( 2 \) 回以上 \( 4 \) 回未満の階級の累積度数は \( 4 \) 人,
 \( 4 \) 回以上 \( 6 \) 回未満の階級の累積度数は \( 9 \) 人
 なので,
 \( 4 \) 回以上 \( 6 \) 回未満の階級に含まれる値は小さい方から5~9番目の値になります。
 よって,小さい方から8番目の値は,\( 4 \) 回以上 \( 6 \) 回未満の階級に含まれていることになります。

【中央値(小さい方から16番目)】
 ヒストグラムから,
 \( 6 \) 回以上 \( 8 \) 回未満の階級の累積度数は \( 16 \) 人
 なので,
 小さい方から16番目の値は,\( 6 \) 回以上 \( 8 \) 回未満の階級に含まれていることになります。

【第三四分位数(大きい方から8番目)】
 ヒストグラムから,
 \( 10 \) 回以上の階級の度数の合計は \( 5+1=6 \) 人,
 \( 8 \) 回以上の階級の度数の合計は \( 9+5+1=15 \) 人
 なので,
 \( 4 \) 回以上 \( 6 \) 回未満の階級に含まれる値は大きい方から7~15番目の値になります。
 よって,大きい方から8番目の値は,\( 8 \) 回以上 \( 10 \) 回未満の階級に含まれていることになります。

【最大値】
 度数が \( 0 \) ではない階級のうち最も大きい階級は \( 12 \) 回以上 \( 14 \) 回未満なので,
 最大値は,\( 12 \) 回以上 \( 14 \) 回未満の階級に含まれます。

 

STEP5:代表値がヒストグラムと同じ階級に含まれている箱ひげ図を選ぶ

以上より,このヒストグラムに対応する箱ひげ図は
 最小値    ・・・ \( 0 \) 回以上 \( 2 \) 回未満の階級
 第一四分位数 ・・・ \( 4 \) 回以上 \( 6 \) 回未満の階級
 中央値    ・・・ \( 6 \) 回以上 \( 8 \) 回未満の階級
 第三四分位数 ・・・ \( 8 \) 回以上 \( 10 \) 回未満の階級
 最大値    ・・・ \( 12 \) 回以上 \( 14 \) 回未満の階級
をすべて満たすものになります。

あてはまる箱ひげ図の一例はこんな感じです。

テストのときは,適切な箱ひげ図を選ぶパターンが多いので,
すべてがあてはまる箱ひげ図は1つになるはずです。

 

その他箱ひげ図から読み取ることができること

例として15人分のデータからつくられた下の箱ひげ図から読み取れることを考えてみます。
なお,得点は1点単位(小数点以下は考えない)とします。

最小値・第一四分位数・中央値・第三四分位数・最大値

【最小値】
 図から,最小値は \( 40 \) 点以上 \( 45 \) 点未満であることがわかります。
 その中で半分より少し小さい値になっているので \( 42 \) 点であると推測できます。

【第一四分位数】
 図から,第一四分位数は \( 50 \) 点以上 \( 55 \) 点未満であることがわかります。
 その中で半分より少し大きい値になっているので \( 53 \) 点であると推測できます。

【中央値】
 図から,中央値は \( 60 \) 点以上 \( 65 \) 点未満であることがわかります。
 その中で半分より少し小さい値になっているので \( 62 \) 点であると推測できます。

【第三四分位数】
 図から,第三四分位数は \( 65 \) 点以上 \( 70 \) 点未満であることがわかります。
 その中で半分より少し大きい値になっているので \( 67 \) 点であると推測できます。

【最大値】
 図から,最大値は \( 75 \) 点であることがわかります。

【四分位範囲】
 第一四分位数は \( 53 \) 点,第三四分位数は \( 67 \) 点と推測されるので,
 四分位範囲は \( 67-53=14 \) 点であると推測できます。

【範囲】
 最小値は \( 42 \) 点と推測され,最大値は \( 75 \) 点なので,
 範囲は \( 75-42=33 \) 点であると推測できます。

 

65点以上とった人は何人いるか

中央値が \( 65 \) 点未満,第三四分位数が \( 65 \) 点以上であることに注目します。

1.中央値・第三四分位数が何番目にあたるか求める
  15個のデータを2つのグループに分けると,7個ずつに分かれて1個余るので,
  中央値は大きい方から8番目の値であることがわかります。
  大きい方の7個のデータを2つのグループに分けると,3個ずつに分かれて1個余るので,
  第三四分位数は大きい方から4番目の値であることがわかります。

2.\( 65 \) 点以上とった人数を求める
  箱ひげ図から,第三四分位数は大きい方から4番目の値で,\( 65 \) 点より大きい値なので,
  少なくとも4人は \( 65 \) 点以上とったことがわかります。
  また,中央値は大きい方から8番目の値で,\( 65 \) 点より小さい値なので,
  \( 65 \) 点以上とった人は,多くても7人であることがわかります。
  5番目から7番目の人の得点は箱ひげ図のデータだけではわかりません。
  よって,\( 65 \) 点以上とった人は4人以上7人以下であることがわかります。

70点以上とった人は何人いるか

第三四分位数が \( 70 \) 点未満,最大値が \( 75 \) 点であることに注目します。

1.中央値・第三四分位数が何番目にあたるか求める
  15個のデータを2つのグループに分けると,7個ずつに分かれて1個余るので,
  中央値は大きい方から8番目の値であることがわかります。
  大きい方の7個のデータを2つのグループに分けると,3個ずつに分かれて1個余るので,
  第三四分位数は大きい方から4番目の値であることがわかります。

2.\( 70 \) 点以上とった人数を求める
  箱ひげ図から,最大値は \( 75 \) 点なので,
  少なくとも1人は \( 70 \) 点以上とったことがわかります。
  また,第三四分位数は大きい方から4番目の値で,\( 70 \) 点より小さい値なので,
  \( 70 \) 点以上とった人は,多くても3人であることがわかります。
  2番目,3番目の人の得点は箱ひげ図のデータだけではわかりません。
  よって,\( 70 \) 点以上とった人は1人以上3人以下であることがわかります。

同様の考え方から,
\( 55 \) 点未満の得点の人,\( 60 \) 点未満の得点の人は4人以上7人以下
\( 45 \) 点未満の得点の人,\( 50 \) 点未満の得点の人は1人以上3人以下
であることもわかります。

箱ひげ図によるデータの比較

箱ひげ図は,データのばらつき具合をわかりやすく示すことができ,
複数のグループの傾向(例:各クラスの学期末テストの得点の分布)を比較するのに適しています。

例として15人分のデータからつくられた下の2つの箱ひげ図を比較して読み取れることを考えてみます。
なお,得点は1点単位(小数点以下は考えない)とします。

AとBでデータのばらつき具合が大きいのはどちら?
四分位範囲や範囲が大きい方がデータのばらつき具合は大きい

まず,範囲に注目すると,
Aの箱ひげ図では,最小値が \( 40 \) 点,最大値が \( 84 \) 点なので,
範囲は \( 84-40=44 \) 点
Bの箱ひげ図では,最小値が \( 42 \) 点,最大値が \( 75 \) 点なので,
範囲は \( 75-42=33 \) 点
であり,Aの箱ひげ図では \( 44 \) 点の幅,Bの箱ひげ図では \( 33 \) 点の幅の中に
15人分すべての得点が分布していることがわかります。

次に四分位範囲に注目すると,
Aの箱ひげ図では,第一四分位数が \( 52 \) 点,第三四分位数が \( 71 \) 点なので,
四分位範囲は \( 71-52=19 \) 点
Bの箱ひげ図では,第一四分位数が \( 53 \) 点,第三四分位数が \( 67 \) 点なので,
四分位範囲は \( 67-53=14 \) 点
であり,Aの箱ひげ図では \( 19 \) 点の幅,Bの箱ひげ図では \( 14 \) 点の幅の箱の中に
中央値を含む7人分の得点が分布していることがわかります。

これらのことから,最小値・第一四分位数・中央値・第三四分位数・最大値の5つの値以外のわからない値が
均等に分布しているものと仮定し,○印として箱ひげ図に書き加えると,下の図のようになり,
Aの箱ひげ図の方が○印どうしの間隔が大きくなっています。
つまり,データのばらつき具合が大きいといえます。

AとBで70点以上とった人数はどちらが多い?

Aの箱ひげ図の第三四分位数が \( 70 \) 点以上,Bの箱ひげ図の第三四分位数が \( 70 \) 点未満であることに注目します。

Aの箱ひげ図における70点以上とった人数
第三四分位数は大きい方から4番目の値で,第三四分位数は \( 70 \) 点以上なので,
少なくとも4人以上は \( 70 \) 点以上とっていることがわかります。

Bの箱ひげ図における70点以上とった人数
第三四分位数は大きい方から4番目の値で,第三四分位数は \( 70 \) 点未満なので,
\( 70 \) 点以上とった人は3人以下であることがわかります。

第三四分位数が何番目にあたるか求める方法はコチラ

つまり,Aの箱ひげ図の方が \( 70 \) 点以上とった人数が多いとわかります。

BとCで得点が低い傾向にあるのはどちら?
箱の位置が左(または下)にある方が全体的にデータの値が小さい傾向にある

Bの箱ひげ図とCの箱ひげ図で箱の位置に注目すると,Cの箱ひげ図の方が箱の位置が左にあります。
さらに細かく見ると,Cの第三四分位数はBの中央値よりも小さくなっています。
また,Cの第一四分位数はBの第一四分位数よりも小さくなっています。

15人のデータを集計していることから,
第三四分位数は小さい方から4番目
中央値は小さい方から8番目
第三四分位数は小さい方から12番目
の値であり,
Bの中央値は \( 62 \) 点,Cの第三四分位数は \( 61 \) 点であると考えられるので,
Bの箱ひげ図からは,\( 62 \) 点以下の人数は8人,
Cの箱ひげ図からは,\( 62 \) 点以下の人数は12人以上
であるとわかります。

また,Bの第一四分位数は \( 53 \) 点,Cの第一四分位数は \( 50 \) 点であると考えられるので,
Bの箱ひげ図からは,\( 53 \) 点以下の人数は4人,
Cの箱ひげ図からは,\( 53 \) 点以下の人数は4人以上
であるとわかります。

つまり,\( 62 \) 点以下の人数はCの方が多く,さらに,\( 53 \) 点以下の人数もCの方が多いので,
全体としては,Cの方が得点が低い傾向にあるといえます。

 

 

一部わからなくなっているデータを推測する

例として7人分のデータからつくられた箱ひげ図に対して,後から1人分のデータを追加し,箱ひげ図を書き直した場合の追加したデータの値を考えてみます。
なお,得点は1点単位(小数点以下は考えない)とします。

1.7個のデータの値を求める
  7人分の箱ひげ図から代表値を読み取ると,7個のデータのうち5個が明らかになります。

  このとき,不明な値を \( x,y \;\; (x<y) \) として7個のデータを小さい順に並べると,

       \( 2,3,x,8,y,11,14 \)

  となります。

2.データが追加される位置を見つける
  8人分の箱ひげ図において,追加した値を \( z \) とすると,
  最小値 \( 2 \) と最大値 \( 14 \) は変わらないので,\( 2≦z≦14 \) になり,
  下の図のア~カのどこかに追加されることになります。

  アの位置に追加されると仮定すると・・・
  
アの位置に追加される \( (2≦z≦3) \) と仮定し,8個のデータを小さい順に並べると,

    \( 2,z,3,x,8,y,11,14 \)

  となります。

  8人分のデータで箱ひげ図を描くとき,
  第一四分位数は2番目と3番目の平均値,中央値は4番目と5番目の平均値,
  第三四分位数は6番目と7番目の平均値
  になります。

  8人分のデータの箱ひげ図から第一四分位数は \( 4 \) なので,
   \( \dfrac{z+3}{2}=4 \)
    \( z+3=8 \)
      \( z=5 \)
  となり,\( 2≦z≦3 \) と矛盾するのであてはまりません。

  カの位置に追加されると仮定すると・・・
  
カの位置に追加される \( (11≦z≦14) \) と仮定し,8個のデータを小さい順に並べると,

       \( 2,3,x,8,y,11,z,14 \)

  となります。
  8人分のデータの箱ひげ図から第三四分位数は \( 10 \) なので,
   \( \dfrac{11+z}{2}=10 \)
    \( 11+z=20 \)
      \( z=9 \)
   となり,\( 11≦z≦14 \) と矛盾するのであてはまりません。

  オの位置に追加されると仮定すると・・・
  
オの位置に追加される \( (8≦z≦11) \) と仮定し,8個のデータを小さい順に並べると,

       \( 2,3,x,8,y,z,11,14 \)

  となります。
  8人分のデータの箱ひげ図から中央値は \( 7 \) なので,
   \( \dfrac{8+y}{2}=7 \)
    \( 8+y=14 \)
      \( y=6 \)
   となり,\( 8≦y≦11 \) と矛盾するのであてはまりません。

  エの位置に追加されると仮定すると・・・
  
エの位置に追加される \( (8≦z≦11) \) と仮定し,8個のデータを小さい順に並べると,

       \( 2,3,x,8,z,y,11,14 \)

  となります。
  8人分のデータの箱ひげ図から中央値は \( 7 \) なので,
   \( \dfrac{8+z}{2}=7 \)
    \( 8+z=14 \)
      \( z=6 \)
   となり,\( 8≦z≦11 \) と矛盾するのであてはまりません。

  ウの位置に追加されると仮定すると・・・
  
ウの位置に追加される \( (3≦z≦8) \) と仮定し,8個のデータを小さい順に並べると,

       \( 2,3,x,z,8,y,11,14 \)

  となります。
  8人分のデータの箱ひげ図から中央値は \( 7 \) なので,
   \( \dfrac{z+8}{2}=7 \)
    \( z+8=14 \)
      \( z=6 \)
   となり,\( 3≦z≦8 \) よりあてはまります。

  イの位置に追加されると仮定すると・・・
  
イの位置に追加される \( (3≦z≦8) \) と仮定し,8個のデータを小さい順に並べると,

       \( 2,3,z,x,8,y,11,14 \)

  となります。
  8人分のデータの箱ひげ図から第一四分位数は \( 4 \) なので,
   \( \dfrac{3+z}{2}=4 \)
    \( 3+z=8 \)
      \( z=5 \)
   となり,\( 3≦z≦8 \) よりあてはまります。

以上より,追加したデータの値は \( 5 \) または \( 6 \) であるとわかります。